大阪地方裁判所 昭和25年(タ)44号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事實〕
原告(女)は被告(男)と結婚しその間に長男が生れたが、原告の主張によると、被告は性格異常に近く、経済的能力はなく、その上被告の母と共に原告を虐待するので、原告は辛抱し切れず実家に帰り、その後原告の両親は円満に解決するよう交渉したが、被告側には誠意がない。
原告は右を理由として離婚及び慰藉料を求める。
〔判斷〕
離婚については原告勝訴。慰藉料については原告一部勝訴。判決は原被告が結婚後被告の父母等と同居し家族全員で船舶用チヱンの製造業を営み食事については主食だけは原被告だけ別にその配給分を炊いていたので原告は栄養不足となりがちであつたが父母等は比較的ましな主食をとつていたこと、被告は無口ですべて親のいう通りになり親に非があつても原告を庇う風がないこと、姑は原告を冷遇し些細なことにも文句をいう等のことがあつたこと、そこで原告は実家に帰つたがその後も被告側に誠意がなく原告は結婚継続の熱意を喪失したことを認め、右事実では被告は性格的にも経済的にも特段の支障があるとはいえないとした後次のように判示した。
「………食事の点については被告の父母の態度は同情が足りず、或は道德的非難を蒙らうとも、これを目して結婚を維持し難い虐待を加えたものと断定し難い。その他既に見たような姑八重の態度は新夫婦たる原被告に対しては一般に冷酷そのものと認めざるを得ない。然しかかる冷遇及びこれを是正しえないどころかこれをなすがままに委せた被告の性格態度を合せ考えても、今直ちにこれを精神的な虐待として、法律上結婚を継続し難い事由あるものと評価しうるかどうかも疑問である。
然し乍ら姑八重や夫たる被告の右に述べたような性格、態度は原告をして結婚当初より被告の家庭の空気を嫌悪するの念を生ぜしめ、果ては夫たる被告に対する愛情と信頼を喪失せしめて遂に実家に逃げ帰らしめる原因となつた。そしてその後の復縁の交渉における被告側の結婚維持に対する熱意の欠如や不誠実な態度によつて、原告は今では謂はば夫としての被告に見切りをつけた心境で、仮令どんな条件のもとにおいても、被告との結婚を継続する意思はないのである。………
かくて以上認定した経過のもとに、原告が右のような心境に達した以上、被告の本心がどうであつても、最早、夫婦相互の愛情と信頼とを基盤とする夫婦生活は今後到底これを期待し得ない羽目に立至つたものと云はなければならない。これを法律上夫婦の名の下に結びつけておくことは妥当でないのであつて、右認定の事情も亦民法な第七百七十条第一項第五号に所謂結婚を継続し難い重大事由がある場合に該当するものと認める。」